「普通って、なんだろう」
そう聞かれると、
うまく答えられないのだけれど、
少なくとも、
平均値の子ではなかったように思う。
月齢より遅れていたわけではなく、
むしろ、いろいろなことが早かった。
身体もしっかりしていたし、言葉も理解も、
こちらが思っている以上に進んでいて、
そのぶん、
頑固さや譲れなさ、こだわりの強さもあった。
小さな体の中に、
大人のような思考が
すっぽり入ってしまったような、
そんな感覚だった。
親のものさしで測った
「ダメ」「今はやめておこう」という指示は、
ほとんど通らなかった。
月齢の低いうちは、
気持ちを言葉にできないもどかしさや
気持ちに折り合いをつけることが難しく
癇癪も特に多かった。
なだめても、
気を逸らそうとしても、
場面を変えても、
食べ物で釣っても、効果がない。
子どもって、
もっと単純で、
コロッと切り替えられるものだと
思っていた。
でも、違った。
頑固で、
こだわりが強くて、
正直、しんどいと思う場面は多かった。
扱いにくい、と思ってしまう自分に、
少し罪悪感もあった。
子育て向いてないのかな。
と悲しくなったこともあった。
お出かけにも、
とても気を使った。
大人の環境に子どもを連れて行くと、
こちらの気がすり減ってしまって、
ほとんど行かなくなった。
あるとき、
「言うことを聞かない」のではなく、
納得しないと動けないのでは?
と思うようになった。
切り替えが苦手だな。と気付いてからは
秩序感を大切にすることと、
見通しを持てるようにすることを
意識するようにした。
予定があるときは、
できるだけ前もって伝える。
何時に出て、
どこへ行って、
どんな流れで動くのか。
わかりやすく書いて図で説明。
急に動かそうとしない。
心の準備ができる時間を、
できるだけ確保する。
そうすると、
「ダメ」「今は無理」と言わなくてもすみ
子どもも安心して動くことができた。
最初から大きく崩れないことが
増えていった。
たとえば、
動物園に行きたがった日のこと。
その日は、
すでに別の予定が入っていて、
私たちは車で動いていた。
動物園へは、
電車で行く場所だった。
朝から動かないと間に合わないし、
その時点で、もう時間は遅かった。
服装も違う。
準備も、まったく整っていなかった。
「今日は行けない」
そう伝えても、
すぐに納得できるはずがなかった。
どうして行けないのか。
今は何が足りないのか。
何ができていて、何ができていないのか。
一つずつ、
かなり時間をかけて説明した。
なかなか譲らなかった。
正直、こちらも疲れた。
でも、
行けないものは行けなかったから、
根気強く説明。
最後は、子どもが折れた。
その姿を見て、
「わがままなのではなく、
状況を理解するために、
情報と時間が必要だっただけなのかもしれない」
と思った。
一見すると、
扱いにくい子に見えるかもしれない。
実際、扱いにくい。
でも今は、
それは欠点ではなく、
納得してから動く力なのだと思っている。
理由が分かれば、
腑に落ちれば、
集中力も、向き合う姿勢も、
とても強い。
向き合っている最中は、
そんなふうに思えない日も、もちろんある。
それでも、
「どうしてできないのか」ではなく、
「どうしたら伝わるか」
「どうしたら理解できるか」を
考えるようになってから、
親子の空気は少し変わった。
今はそう見えなくても、
この子なりの理由があって、
もしくは脳の仕組みなのか、難しいらしい。
が、自分でコントロールできるようになったとき、
それは強みになるかもしれない。
今は、
そう思えるようになった。
それが、
私にとっての、
いちばん大きな変化だった。